ライブ配信トラブル事例

技術解説:ライブ配信の事前現地調査

表紙画像は雑に扱われ、鉄扉によって破断した光ファイバの例(某ホテルにて)

事前現地調査は面倒ではない!

ライブ配信における事前現地調査は、現場が遠ければ遠いほど、調査項目が増えれば増えるほど面倒です。ただ、事前確認を怠ってライブ配信本番で事故を起こした場合を考えましょう。

発注者を含む関係者や視聴者に迷惑をかけ、その後の謝罪や再放送など一連の対応を考えると、事前調査の比でない心労を抱える程申し訳なく、自分の役割とは何なのか、他人に言われて再確認しなければなりません。

想像しただけで背筋が凍りますね。そう考えると、事前現地調査は面倒ではないことが分かります。エンジニアとしては特に初めての会場では、下見なく本番に臨むのは賭けに近い感覚があります。

仮に遠方であっても、未経験の会場であれば事前の現地調査は重要です。「予算の兼ね合いで省略」というプロジェクトも中にはありますが、その際はリスクをご理解いただき、「事前の現地調査まで含んでライブ配信です」と当社では説明差し上げております。

「家に帰るまでが遠足です」的な。

事前調査項目(一部)

東京ライブ配信でいつも行っている現地調査の一部を列挙します

  • 作業場所確認(機材卓/カメラ位置/電源位置など)
  • 電源容量確認(特に他社との共同作業の場合、要注意)
  • インターネット接続環境確認(ルータ持参の要/不要、ONUの位置など)
  • インターネット接続回線実測(プロバイダ/回線速度/outbound 1935 ポート開放/占有回線か否かなど)
  • 機材搬入手順確認(宅急便搬入の可否/搬入経路/必要提出書類など)
  • 最寄りの家電量販店(いざという時の命綱)

必須のスキル

特にスキルが要求されるのは「インターネット接続回線実測」になると思います。

最もよく聞くライブ配信トラブルのひとつに、「インターネットにつながらない」「インターネットにつながったのに正しく配信できない」があります。本職のネットワークエンジニアが対応すれば原因は特定できますが、未経験での対応は困難です。

また、経験者であっても正しく事前調査されていない場合、当日のトラブルに対応できない時もあります。

どうしても事前に現場に行けない場合は、会場担当者に「過去にライブ配信された実績はございますか?」と聞いてみるのも良いでしょう。実績があると言われた場合、少しだけ不安が少なくなります。あくまでも、少しだけ。

事故例

以下に、初訪問の会場で起こった事故の実例を示します。
お客様から「リスクはこちらで負うから、事前調査は不要」と伺って会場のホテル入り。光回線が破断しており、慌ててNTTを呼ぶも、修理は本番開始までに間に合いませんでした。

予め携行していた”Teradek BOND”を用いて配信したのですが、会場が地下だったため特定の通信キャリアが通信できず、唯一通信できたキャリアのSIMを手元にあるだけ集め、冷や汗をかきながらの配信となりました。

このように「リスクは負わせないから、事前調査不要」と伺っていても、最後は当然のように「現場で何とかしてくれ」と言われる訳です。お気持ちは良く分かります。

エンジニアとしては最後の最後まで諦めたくはありませんから、できる限りの事前準備をして本番に臨みます。

最後に

現地調査では、特に問題は見つからず会場担当者との軽い打ち合わせ程度で終わることも多くあります。だからといって、現地調査をおろそかにしてしまうと、本番でのトラブルにつながるのも事実です。

慣れてきたころに事故を起こしやすいのは、車の運転と同じでしょうか。

ライブ配信に臨まれる皆様の、末永い安全運転・安定運用をお祈りしています。